駆け出し絵描きの夢語り
<ピンポーン…ピンポーン…> すみませんー ちょっと今出れないんでベランダの方回ってもらえますー? ごめんなさい、手が汚くって! え、あぁ画材屋さんの… あ、お釣り?! あっちゃー 私ったら急いでて… どうもわざわざ届けてもらっちゃってすみませんでした! え?あぁ、あの絵? はい。まだ…途中ですけど。 …ひょっとして描く方なんですか? 分かりますよ!なんとなく、絵の具の匂いが…。あはは、冗談です! よかったら中で見ていかれます?散らかってますけど。 なかなか思い通りの色が出せなくて…。もどかしいんですけどね。 え?この絵のテーマ…ですか?うーん…そうだな。「旅」かな。 …私ね、絵は心で描くものだと思うんです。 心ある人が、心を込めて描いて初めて誰かの心に響くいい作品ができる…。 いくら緻密で本物そっくりに描いたとしても、何も伝わらなければそれだけだもの。 何かを感じてもらえる表現者になりたい… 私がこの世界に飛込むきっかけになった作品がそうだったんです。 まるで体の中を電気が走り抜けて行ったみたいな感覚があって、 息をするのも忘れるくらい引き込まれた…。 私もこんな絵が描けたらって…本気で思った。 でも、なかなか上手くはいかなくて…。 思いきってその画家に手紙を出したんです。そしたらね 「色々な経験をして人として大きくなりなさい。 そして、あなただけの表現を見付けなさい」 って…。 だからこの絵は「旅」。 私自身の心の旅を描けたらって… あはは、何だか恥ずかしいな。 こんなに自分の絵について語ったのなんて初めて… さぁ、今度はあなたの番ですよ!どんな絵を描かれるんですか? 聞かせてください、私に…!