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38.天井

地下都市への通信

本物の空は驚くほど青くて 僕はおもわず涙が出そうになった。 驚いた… 人の体に害を及ぼすぐらいだ、地上はもっと酷い世界なのだと想像してたけれど なんて、なんて …綺麗なんだろう。 ――ジオフロント。高度に発展した地下都市。 そんな世界に生まれてこのかた、地上というもうひとつの世界を知らずに生きてきた。 それなのに…どうして、こんな一瞬で 「間違いだったのだ」と悟るのだろうか。 きっとあの時の僕らは、大切なモノを見失っていたんだ。 近代化の波に流されて… お日様の光の下、川は流れ海となり雲となりやがて雨が降り…再び川となる。 雨と大地が緑を育み、草木が酸素を作り出し、多くの生命が呼吸を始める。 そよ風が種を遠くまで運ぶ。 人々は木陰に身を休め、語らい、空の青さに心洗われる。 自然に助けられ、悩まされ、それでも共に生きてきたのは 離れて生きる事ができなかったからだ。 本当は感謝しなくちゃいけなかった。 大切にしなくちゃいけなかった。 当たり前ではないと、気づかなければいけなかった…。 自分達で汚染して住めなくしておいて 地下都市という新しい世界の創造を技術革新だと喜んで…… まったく、なんて バカなんだろう。 ジオは人工世界だ。 管理された環境は過ごしやすいかもしれないけど 高くに見える空も本当は映像で、誰もがそこには天井がある事を知っている。 そこに住む僕たちはそれが当たり前だけれど… 本当はとても悲しい事だったんだ。 もしこの音声記録をジオの誰かが… もしくは未だ地上で暮らす誰かが、聴く事があったなら 進歩の影で、何かを失ってはいないだろうか。 権力者に都合よくつくられた世界を見せられてはいないだろうか。 真実は見ようとしなければ見えてこない。 どうかその目で、耳で… 世界の真実を確かめて 本当は何が大切なのか、必要なのか…もう一度考えてほしい。

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