夜店
漆黒の闇に包まれて 提灯明かりが呼吸している 雑踏の波にのみこまれ なんだか"ひとり"のようだった 群れた金魚が ぐるぐる回る 水にうかんで ぐるぐる回る ぐるり ぐるりと流されて 私はどこに行き着くのだろう? 誰かが言った 「狐のお面はいかがでしょうか? 壊れやすい人の身で、こんなうき世はいきずらかろう。 狗に喉元食われぬうちに 狐になるのはいかがでしょうか?」 聞けばなんでも代金は 魂ひとつでいいそうだ 「儲かりますか?」 「儲かりますよ」 漆黒の闇に包まれて 提灯明かりが呼吸している 魂ひとつは高いので 小銭ふたつでラムネを買った 最後に残ったビー玉で 今日も世界を逆さに覗く ぐるり ぐるりと流されて 私はどこに行き着くのだろう?