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5.モノクロゲーム

どうして君は笑っているの?――― 笑いたいからに決まってる。
いつまで演技を続けるの? ――― …うるさい。君には関係ない。

 

どこまで逃げてもついてくる 真っ黒な、もう一人の僕。
気がついたら足元で 僕の2倍は大きくなって、不気味に笑ってるような気がした。


僕のおかしな一人芝居を。


どうして君は嘘をつく?  ――― 僕は嘘なんてついてない。
友達ごっこを続けるの?  ――― …何を分かって言ってるんだよ。


【…ねぇ、どうして?】

気がつくと巨大なチェス盤の上、黒のキングの座についた真っ黒な僕と対峙した。
僕と同じその瞳が、心に深く突き刺さる。

「…だって、分かんないよ!君に僕の気持ちなんて…!!
偽ってでも笑ってないと、僕を置いてどんどん時間は流れていく…。
まるで僕なんていないみたいに…」

白い障壁は脆く、黒に消されていく。

「一人になるのが怖い。失うのが怖い…!
だけど…、このままじゃ息苦しくて死んでしまいそうだ…」

僕も、黒に消されてしまうのか…?

「…いっそ消してくれよ。これ以上僕は…、きっと笑えない…」

何も出来ずにうずくまる、最後の駒の僕。
『いいや、もう』そう思った。
だけど背中に伝わってきたのは、君の温かな熱。

「やっと吐きだせたね」

その瞬間、僕の中の何かが音をたててくずれた。
そして頬を伝ったのは一粒の涙。

「君は強がりだから、無理にでも笑うでしょ。でも…もういいんだ。
このままじゃ、君が壊れちゃう」

「誰かの前で泣けないのなら、僕の闇に隠してあげる。辛い時には泣けばいいよ。
僕はいつでもそばにいるから…」

―――こんなに泣いたのは、久しぶりだった。


モノクロゲームはもうおしまい。僕はまだ嘘つきの世界にいる。
…けれど、少しずつ変われればいいなと思う。

晴れた日に太陽を背にグーサインしてみた。
僕の影も同じように返してくれた。

05.白黒

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