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8.ゆめくじら

涙はどうしてしょっぱいの?
それはきっと、私が昔海だった頃の記憶。

 

微かに聞こえる潮騒
気をつけないと飲まれてしまいそう…



海の水は冷たくて
でも 体の芯まで冷やすことはなくて

底の砂は真っ白
光の輪っかが閉じては開いて まるで遊んでいるみたい


時々やってくる雲は 優しい目をした大きなくじら
ゆったりゆったりのんびりと ずっと上を泳いでる


「ねぇ、くじらさん」
いつも聞きたくて手を伸ばす


その大きな澄んだ目は どんな世界を見てきたの?

よく響くという声は どんな想いを伝えるの?

広い広い海の中 道を見失うことはある?


そう尋ねたかったけど 言葉はぶくぶく泡になり
届くことなく上がっていった



気がつくと潮騒。優しくて、悲しい音色…

頬に残る波跡は、昨日の私の涙の記憶。


濁った世界は見にくくて、私の声は小さくて、いつも迷子になるけれど

私の海が、流してくれるから平気。


"今日も一日を始めよう"

08.水の中

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