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12.とある写真家の出発点

あぁ、お越しくださったんですね!ありがとうございます。
まさかこの歳で個展が開けるなんて、光栄ですよ。
本当 皆さんのお陰です。あ、どうぞ、ご案内します。


いやぁ、今年は世界中を飛び回りました。
たくさんの人に出会い、その度に僕はカメラを向けた…
僕の知らない暮らしがそこにはあって、世界の広さを感じましたよ。


…ああ、その写真ですか?
いやお恥ずかしい、うちの家族です。
ちゃんとしたカメラで人を映したのはこれが初めてでして…
いわば、僕の原点。
あはは、お世辞にも上手いなんて言えないですがね。


当時の僕は人を映すなんてまるで興味がなかった。
燃えるような夕焼けの色、
青空に映える花畑、
雄大な山をバックに撮る紅葉…
そういうものに、一人で熱中してるのが好きだったんです。

でも、父の経営していた写真館が廃業に追い込まれましてね。
父は最後にあのスタジオで映すのは家族がいいって…

セルフタイマーつきのカメラを三脚にセットし、
母、姉、愛犬を並ばせた後、僕に言ったんです。
「お前が撮ってみるか」って。

レンズ越しに家族を見たとき、何か…普段とは違う感情がわいたんですよ。

母の笑いじわ、こぼれるような愛犬の瞳、それを抱く姉の優しい表情…
父は僕を温かい目で見守ってくれていました。

「愛おしさ」と言ったらいいのかな…
表情から滲むその人の生き方といいますか…
それに惹き付けられて以来、僕は人を撮ってきました。

こうして誰かの目に触れて、僕の感じた何かを共有して…
そりゃ中には悲しい現実もありますよ、
でも…伝えたいと思うんです。


だから、僕はこれからも写真を撮り続ける。きっと…ね。

12.並んで

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