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33.夢色グライダー(助走編)

…いい風が吹いてる。
ちょっと寒いね。ごめんね、あたしのわがままにつき合わせて…
冬の風はより遠くまで運んでくれる…なんて前に聞いたのを思い出して。



ねぇ、あたし今、どんな顔してる?

立ち止まってた数ヶ月間
あたしはずっと前の気持ちを思い出そうとした。
ただただ楽しかったあの日の気持ち、何も考えなくても飛べた頃の気持ち…

でもね、駄目だった。
あたしはもうそれだけの道を歩いてきてしまって、
歩き出す前のあたしにはどうあがいても戻れなかったんだ。

悩みや迷いはいくら捨てても捨てきれない。
それならどうすればいいんだろうって思ったとき、
ふと、一緒に飛べるのかなって、自分に聞いてみた。

あたしからの答えはまだないけど、
前より少しだけ軽くなった感じ。不思議だよね。ない方が軽いに決まってるのにね。


グライダーって人の生き方に似てる。
飛び立つために自分の足で山を登って、いざ飛び立っても風の力や上昇気流に助けられて
それでやっと遠くまで行けるし、綺麗な景色も見れるんだよね。
先が見えない分怖いってとこもあるけど。


…そろそろ行くね。
不時着したら迎えに来て。連絡するから。

(走り出して、地面を蹴ってグライダーが風に乗る)

行ってきます。

33.翼

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