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44.幻像の底町

息ができないような気がするんだ


纏わりつく空気 灼熱の蜃気楼
光化学スモッグ
何に急かされるわけもなく
どこともいえぬ"そこ"を見つめ行き来する人間たちの波

「この町はおかしいよ」

その感覚が残っている人間が
いったいどれくらいいるというのか
電車にのればそのほとんどが
コードにつながれ 別世界への逃避を繰り返しているというのに

安っぽい看板明かり
夜になってもさめない熱気
連なる赤色テールライト
揺らぎ溶け出した自らの輪郭

まるで、まるでこの町は・・・

"幻像で埋め尽くされた水底みたいだ”

僕はそこに浮きながら 息をするのを忘れている 魚みたいだ


 ごぽごぽ ぶくぶく  しずむ しずむ


溶けてしまいたいような 溶けてしまいたくないような
幻影ぼやける底町で
かろうじて僕は いきをする。

44.幻?

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