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50.夏色硝子とオシロイバナ
蝉時雨。
彼らにとって 一度の夏は
長いのだろうか 短いのだろうか。
黄色と青が涼しげに踊るコップの中に
注がれたサイダーの泡は
あがっては消え、あがっては消えを繰り返してる。
一気に飲み干すと、喉の奥を ぱちぱち ぱちぱち…。
“あつい…”
グラス、皿、花瓶、風鈴…
部屋じゅうのあちこちに置かれたガラスは
夏の光を反射させ、きらきら色々に光ってる。
1200度で赤白く溶かされたガラスを
竿で巻き取り、持ちかえて。
そのとき、なのかもしれない。
吹き込んだ息と一緒に
“わたし”が、ガラスに宿るのは。
時間が経って動けなくなってから ようやく
その気持ちの、名前を認めた。
“熱いよ…”
小瓶にいけた オシロイバナが
どうか、どうか早く枯れてしまいますように。
冷たいテーブルに頬をつけ
そんなことを祈りながら
鳴りやまない蝉たちの声と共に
私は、固く、目を閉じた。
50.熱!
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