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59.優しい死神

…狩るな?
はははは… 突然来て何を言い出すかと思いきや。
一体誰の口利きだ?こんなくだらねぇことに、いくらつぎ込んだ?え?


…ふん、だんまりか。
まぁいい。…それで?
人間、お前、私とは一体何で取引するつもりだ?
まさか、対価もなしに自分の望みだけ叶えてもらおうなんざ
思っちゃいねぇだろうな。

「なんでも」…?
へぇ。なら、今ここでお前を狩っても…
将来その腹に宿るであろう赤子を狩っても
お前は構わない、ということで、いいんだな?


…ふん。その目、私が一番嫌いな目だ。
否定も肯定もせずに、怯えているくせに、なぜ真っ直ぐ見る…


何…? 私が「優しい死神」だと聞いて来た、だと…?
ちっ 情報屋はあの性悪占い師か。馬鹿にしやがって。
過去のことをいつまで吹聴するつもりだ。


…ひとつだけ教えてやろう。
「優しい死神」なんていない。
いたのは… 弱くて、未熟で、ただの“甘やかし”をやった死神だ。
そして、取引した人間は… 後でもっと不幸になった。

…聞くか?何が起きたか。
お前も、同じ道を選ぶか…?


はは、声が出ねぇか。
…続きを聞きたくなったら来い。いくらでも話してやる。

ただ、こんなことに時間をさくよりゃ
そいつのそばで、大人しく、手でも握ってやってれば?


じゃあな。




…自分を投げ出してでも、か。
人間ってのは、わけがわからん。

59.狩ってはいけない

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