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64.放課後学園
もう行かなくちゃいけないよ
でも、もう少しだけ遊んでいたいんだ
昼間の賑やかな気配を残して
西日に照らされた教室に規則的な影がのびる
夕焼け溶液の中に沈んでいくみたい
空っぽになった校舎はその中で泡を吐き出しながら
ゆっくりと溶けるのだ
そうして夜と同化して眠る
もう行かなくちゃいけないよ
でも、もう少しだけ遊んでいたいんだ
光が反射した廊下はどこまでも長くて
最果てが霞むから 終わりなんてないのではないかと
錯覚していた
どこか息苦しく感じるのは 重たくて張りつめたような
それでいて 懐かしく切ない空気が 静かに沈殿してるから
でも、ついに底が抜けるんだね
ねぇ、たのしかった? ぼくは楽しかったよ
虚構の放課後にみんながいた
窮屈な体は置き去りにして 自由に泳げるみたいだった
ほんとうでいられたんだよ 嘘もついたけど
でも、ずっとマシな嘘だったんだ 本物の自分より
もう行かなくちゃいけないよ
でも、もう少しだけ遊んでいたいんだ
もう少しだけ もう少しだけ
せめて大音量のチャイムが時を告げるまで
ここにいてくれよ
ここに、いさせてくれよ
64.放課後学園
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