68.告白ふたたび
今日は、誘ってくれてありがとうございました。
おいしいご飯に、おいしいお酒…
…励まされました。
本当は、分かってて誘ってくださったんですよね。
なのに、何も聞かないでいてくれて… 本当に、ありがとうございます。
少しだけ、寄り道してもいいですか?
… あぁ、やっぱり、夜の公園って好き。
静けさの中に、昼間の歓声が眠ってるみたい。
街頭がまあるく照らして、まるで、舞台によく似てる。
告白、しちゃおうかな…。。。
「本当はわたし、演じる側にずっと憧れてたんです。」
…ずっと、ずっと前から。
それは、以前、ここに来た時も言いましたね。
それで、わたし、ついに誘惑に負けて、舞台に立っちゃった。
楽しかったぁ。舞台に立ってる自分なんて、まるで夢みたいだった。
大好きな場所だった。同時に、とても、辛かったけど。
ありがとうって、感謝したくなる瞬間も、
人の本音と建前に、悲しくなる瞬間もあった。
それでね、結局また、ダメになっちゃった。
ずっと曖昧にしてたんです。
でも、役者として生きていきますかって本当に問われた時に、
どうしても「はい」って言えなかった。
安全で、フツウな生き方から、手が離せなかった。
気持ちを表現する仕事なくせに、
自分の気持ちをひっかきまわされるのが辛くて
表現するのが、苦しくて、
そこの壁を、どうしても越えられなかった・・・
いいんです、励まさないで。
これは甘えだから。励ましてほしいんじゃないんです。
あはは、ごめんなさい。
前髪、もっと長かった時なら、ちゃんと涙、隠せたのに。
いつか、本当のわたしで、自然に笑えるようになったらって
前の時言ったけど、
本当のわたしって何だろう。分からなくなっちゃった。
そんなものあるのかな。
あなたは、とても優しい人。
でも、ごめんなさい。
わたしからご飯に誘えるのは、もう少し先になりそうです。
68.前髪
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